2001年4月21日(土)

エピソード1と2001年宇宙の旅


Quote…Unquote: To love what you do and feel that it matters - how could anything be more fun?

- Katharine Graham (U.S. newspaper executive, 1917-)


 

先週の水曜日は、前回紹介したR研究所I氏の送別会が所内のクラブで催された。

その翌日の12日は、次女の専門学校への入学式があった。

目黒雅叙園での入学式を終えた後、デザイナーのR・Aさんが東高円寺のギャラリーで開いている企画展に家族と出かけた。

このR・Aさんは、「当見聞録:2000年3月3日(金曜日)UooPSポスター広告と女性フォトクリエーター」で紹介したデザイナーである。

R・Aさんの簡単な説明をまず聞いた後、地下一階の真っ暗なギャラリーの壁をつたって歩くのだが、目と低周波の音に耳が慣れるまで15分くらい、暗闇の中でカミさんと次女の3人でじっと佇んだ。

耳に聞こえるのは、Ghoooonnn!という低周波と、部屋の隅に置かれた「硫酸ナトリウムの結晶が出す透明な光」だけの世界である。

最初は、そのオブジェまでの距離感がまったくなく、意識の中では、2、3メートルのつもりなのだが、「作品を踏まないようにして下さい」というR・Aさんの言っていたことを思いだし、3人で確認しながら一歩一歩近づいて行った。

そのブラックホールから出てきた我々に、「どうでしたか?」というR・Aさんの質問。

カミさんも次女もなんと答えていいか戸惑っていたようだ。

私は「原始の地球、いや宇宙に放り出されたら、こんな感じなのかな―」なんていうコメントをしたようだ。

あの数メータ四方の真っ暗な部屋の隅で光る硫酸ナトリウムは、数光年先の宇宙にある得体の知れない未確認物体なのだ。

このR・Aさんの担当した作品は「エピソード1」と呼び、3組み4人の表現者によって『それぞれのテーマが展開されていく』そうだ。

以下に、R・Aさんからのメールを紹介しておく。

 

伊賀 忍さま

ようやく展覧会の1クルーが終わり

一区切りがつこうとしています。

御家族でお出で頂いて本当にありがとうございました。

あれが、ここ10年らいずっと続けている活動です。

デザインはいわば生活の糧ですが、あれは私の生きる糧です。

この個展の後、夕刻に永楽倶楽部でネクチャードットコムの鈴木社長とお会いし、福島勇三さんにカミさんと次女のコクテルを作って頂いた。

永楽倶楽部と福島勇三さんについては、「当見聞録:2000年2月18日(金曜日)マイスター福島勇三さんと女性バーテンダー」で紹介した。

カミさんは「ジョンコーリンズ」、次女は「ギムレットソーダ+チェリージュース」であった。


ようやく、4月21日の本題に入る。

アーサー・C・クラーク原作、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」(デジタルリミックスバージョン)が「ル・テアトル銀座」で上映されているので、夫婦で見に行った。

この映画の鑑賞券を入手するために、テアトル東京のM氏には本当にお世話になった。

この映画が最初に上映されたのは、人類が始めて月面に降りた前年、1968年だったそうだ。

リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れ…、思わず、そうだ!その数年後、富山県民会館のコンサートで我々のバンド(The G)も、この「ツァラトゥストラはかく語りき」を最初に流しながら幕を上げ、グランドファンクレイルロードの「Are you ready!」を熱演したものだ。

その時代に生きた若者が、この映画を見て「宇宙船ディスカバリー号のレプリカ」を作ったというステキな話を聞いた。

映画館の会場入り口に飾ってあった、オガワモデリングの社長が作ったという模型がそれである。

すばらしい作品であった。

慶応大学の学生であった小川さんは、この映画を見てディスカバリー号のレプリカモデルを作り、現在は「ビジュアルイメージ」のデザイン会社であるオガワモデリングを経営されている。

前述のR・Aさんといい、小川さんといい、自分の糧を大事に育みながら「いい仕事」をしていらっしゃる。

なんと、幸せな人たちであろうか。

(つづく)

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